「ここは“ラーメン屋”である以前に“豚骨スープ屋”だ」ぶたのほし とんこつスペシャル


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「入道雲は、どうして入道雲って言うの?」と、娘に問われたらどう答えるべきか、考えながら灼熱の尼崎を歩く。とにかく暑い。道路で目玉焼きが出来そうなほど暑い。噴き出す汗をハンカチで拭いながら歩くこと10分。見えてきた生成りの暖簾。Googleマップによるとあそこで間違いないらしい。

「やった、全然並んでないやん!まあ盆とは言え平日やもんなあ」と内心安堵しつつ店の前に着くと、ガラス戸越しに人の影、影、影。店内に待ちスペースがあり、15人ほどが列を作っている。「知ってたけどサ…」ガラス戸から入ってすぐの券売機で “とんこつスペシャル” をポチり、最後尾に並ぶ。列は時間とともに少しずつ進み、同じだけ少しずつ後ろに伸びる。

待つこと20分。調理場の真ん前の席へ案内される。「ここでクシャミなんてしたもんならヒンシュクやろなあ」そう思うと鼻がムズムズしてくる。目の前で次々と、手際良く生産されるとんこつラーメン。一度に2杯ずつ。コンコンコン、コンコンコン。興味深い一方で、生殺しである。次第に、あれはとんこつ煮玉子、これはさかなとんこつ、などと見分けがついてくる。

コンコンコン
コンコンコン

更に待つこと5分。「お待たせしましたスペシャルです」くしゃっと表情を持ち上げた店主が、私にラーメンを差し出した。

濃厚。ドロッドロに濃厚。コッテコテ。それでいて、バシッと引き締まり、臭みが皆無で上品。これは単に豚骨を炊いたスープではない。店主の “念” とか “魂” といった無形のものが込められている。たとえば私が同じ材料同じ製法でスープを炊いても、こんな風に仕上がると思えない。この店主も “能力者” に違いない。丼にスープを注ぐたびに、寸胴を力一杯かき混ぜる背中が、彼の生き様を語っている。

ごつごつの剛麺も、やわらかいバラチャーシューも、こま切れの玉ねぎも、豚骨スープを “ラーメン化” するためのトッピングと相成っている。極上スープを起点として釣り合う材料が選別されている。見事なバランス。完成度。

豚骨ラーメンの雄「無鉄砲」で修行し独立されたという肩書きだが、「無鉄砲」とはまた別物と考えたほうがよい。ドロドロコテコテの豚骨スープを、それはそういうものと割り切れる者にとって至高の豚骨スープを提供する店、ぶたのほし。ここは “ラーメン屋” である以前に “豚骨スープ屋” だ。ご馳走様々。

【お店】ぶたのほし
【アクセス】JR尼崎駅から徒歩10分
【メニュー】とんこつスペシャル 1,100円
【私のおすすめ度】AAA

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★私のおすすめ度格付(僭越ながら)
AAA 大満足!絶対おすすめ
AA 満足!超おすすめ
A おすすめ
B 可もなく不可もなく
C 人によってはおすすめしない
D おすすめしない

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