「サクッと呑んでパッと出るが粋」
花くじら 歩店


入店時には、もしかして俺のことがまったく見えていなくて、扉がまるで風か何かの力で開いて閉じただけかのように素知らぬ顔の店員たちに少し驚く。

おでんのメニューに値段が書いていないのは粋。北新地の店でいう「時価」とは逆の意味合いを見て取れる。いかに安いのかお楽しみといった所か。ここで「ごぼ天っておいくらですか?」などと店員に訊くのは野暮というものだろう。

萎びて酸味を帯びた大根、ビスコサイズの硬いこんにゃく、肉要素が皆無のスジ。出汁の美味しさは聞いて知ったる通りだが、定番モノのタネのクオリティが低い。ただ、皿に乗ってとろろ掛けで出てきた春菊と、酒類のチョイスは良かった。

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出汁の効いたおでんというシンプルで安価なネタをチョイとつまみながら、ガヤガヤと賑やかな居酒屋の雰囲気のなかで一杯引っ掛けるという乙な時間。そこに価値を見出せなければ行列に並ぶ恩恵は感じられないだろう。

数量限定のうどん巾着というのがあって、興味本位で注文したところ、うどんと揚げ玉とワカメが出汁とともに揚げに包まれた珍品で、なるほど、一風変わったきつねうどんで面白かった。

おでん七品、中瓶、ハイボール、日本酒一号で二千円台のリーズナブルさにまた少し驚く。酒類の値段は明らかなので、おでん一品百円〜ということだろう。しかしあの春菊で百円は無いから、ネタによるのだろう。ただこれ以上の詮索は野暮というもの。

あの入店時の愛想の無さは何だったのかと思うほど、活気良い掛け声に送り出され、終わり良ければ良しといった印象。長居するだけタイパは下がる。とにかくサクッと呑んでパッと出たい店。ご馳走様々。

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