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「こんなとこにそんな喫茶店あるん？」いかにもディープな雰囲気ただよう堂山町の路地に入ると妻は眉をひそめた。らしいな、と僕はいいかげんな返事をした。記憶を辿ってみても、この辺りに思い当たるような喫茶店はなかった。スマートフォンをポケットに仕舞って、僕たちはレンガ調の建物 “ACTⅢ” に踏み入れた。
カフェニオン豆吉
ナポリタンセット
“ACTⅢ” の一階奥は吹き抜けており、Ｌ字の階段を上がったすぐ横に、ネットの情報にあった通り、宙に飛び出したような造りの店舗があった。秘密基地を思わせる謎めいた外観が怪しさを放っていたが、扉の横に貼り付けられたかっこいい「ナポリタン」の文字に惹かれて僕は躊躇なく戸を開いた。
店に入ってすぐ脇にテレビ、それから大小のテーブルが視界に入る。左手に高めのカウンターがあり、奥に男性のスタッフ、その後ろの壁では付け睫毛について歌って踊るパミュパミュ某が大きく投影され、歌声が店内に響いている。いたる所にリラックマ風のぬいぐるみが置かれ、吊され、白塗りの壁に真っ赤な戸枠、ゴシックめいたカーテン、木目調のテーブル、シックな食器棚…。その不可思議な空間を一括りにあらわすには、私の貧困な語彙では到底足りなかった。
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運ばれてきたナポリタンはケチャップがたっぷり使われていて、ばっちりと “昭和のスパゲッティ” だった。飾り気のない皿に盛られた素朴な麺をフォークで巻いて頬ばり、私たちは「これこれ」と笑顔を見合わせた。甘いような酸っぱいようななんだか懐かしいその味は、実に堂々たる庶民の味方づらで、自ずから次のひと巻きを誘う。スイスイと食べ進み、ふっと一息つけば、この異様とも言える空間にも何だか、妙な居心地を感じられた。
情報によればパティシエがつくるデザートメニューもおすすめとか。機会があればまた立ち寄ろうか、この不思議空間に。ご馳走様々。
【お店】カフェニオン豆吉
【アクセス】各線梅田駅から徒歩圏
【メニュー】ナポリタンセット700円
【味】ごくごく普通のナポリタン
【雰囲気】不思議空間
【妻の興奮指数】58
【俺のおすすめ度】A
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★俺のおすすめ度格付
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AA 満足！超おすすめ店
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B 可もなく不可もなく
C 人によってはおすすめしない
D おすすめしない
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