「若向きチャンポン」
威風堂々
ちゃんぽん


生前の父が気に入っていて、私も少年時代から何度か連れられ訪れていた夜来香。その味を継承しているとされるのが今回の店、その名も威風堂々。暖簾分けの証のように、入り口テントの両脇には「since1988 夜来香」の文字。威風堂々の開店は2018年で、夜来香の閉店は2020年なので、徒歩すぐの立地にありながら2年間は師弟並んでちゃんぽん・皿うどんを出していたということか。駐車場は、幹線道路向かいの神社の鳥居横に6台。夜来香用に使われていた頃からそうだが、歩道脇に生える街路樹が絶妙な位置にあって停めづらい。

夜来香 チャンポン 2015.10.18
https://fuji-gochi.com/?p=1373

カウンター内で黙々と鍋を振る壮年の店主殿。年の頃は私と同じくらいと察するが、あの日、厨房で怒鳴られていた人だろうか。時々ぶっきらぼうに指示を出し、他の2人の店員はおとなしくそれを聞き、見るともなく店主の顔色を窺いながら視線を落として作業をしている。師匠のように怒声を散らすよりはマシだが、これはこれで活気がなくてよろしくない。落ち着いて食事をしたい客には良いかもしれないが、それでいくと店内のBGMが喧しい。

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注文から5分程で配膳。湯気がもうもうと立ち昇る丼面。スープから盛り上がる具材が “どっさり感” を演出するが、箸で混ぜ返してみると麺ばかり多い印象。野菜をはじめ材料費が高騰する中で、一杯あたりの満足感を維持するための苦肉の策かもしれない、と肯定的に受け止めた。モヤシ、人参、キャベツ、玉ねぎ、きくらげ、平天など、一般的なチャンポンの具材に加えて特徴的なのは小海老の天ぷら。スープの染みたジューシーな衣に包まれたエビが香ばしい。

まずは匙でスープを啜る。水玉の油膜が浮く橙色の白湯。下手すると舌をヤケドするほどの高温。慎重に味を確かめる。ばん!と分かりやすい旨味。するりと舌を撫でる軽さ。メリハリを感じさせる強めの塩味。第一印象で「おっウマイ!」と思わせるが、“そこまで” だった。何が “そこまで” なのかは後述する。

麺はハリのある縮れ麺。いわゆる “長崎チャンポン” から連想される、スープをよく吸う白っぽいストレート麺とは異なっている。この、歯の上で砕けるような元気の良いかんすい麺は、濃い口の味噌ラーメンを彷彿させる。なぜこの麺なのか?それは言わずもがな、諸々の要素からこれが最良と店主殿が選んだものだろうが、思わず首をひねる。チャンポンだって縮れ麺でも良いだろうし、これも個人の好みの問題に違いないが、私は腑に落ちなかった。

何はともあれどうしても、まして後継と聞いて尚の事、かつての名店と比較してしまう。威風堂々のチャンポンも悪くはない。しかし夜来香で食べたときの感動はない。何故か?食の専門家でないため詳しい差は分からないが、ただ言えるのは、夜来香のチャンポンには “深み” のようなものがあった。それは食べ進めるごとに増してくる、“しみじみとした美味しさ” だった。一方、威風堂々のチャンポンにはそれがない。最初のひとくちでオッと思わせるものの、そこが美味しさの最高点であり “そこまで” 。あとは慣性、成り行きの愉しみである。

熱々のままを勢いよく食べ切れる食欲旺盛な客には良いだろう。しかしゆっくりと、しまいにはぬるくなったスープをぼちぼちと啜るような、ひとくちごと舌に沁みる滋味を愉しみたい客には、今ひとつ物足りないかもしれない。平日の昼に座席を埋める客がいること。周囲に飲食店が乱立する界隈にあって、それはそれで十分なことだろう。しかし夜来香という巨人の看板を背負う若い店主殿が、期待の大きさゆえに肩を落とす私のような古参客に対して、その求めに応じる、あるいは新しい価値を提示するとすれば要点はそのあたりにあると思われた。ご馳走様々。

【お店】CHINA DINING 威風堂々
【アクセス】JR甲子園口駅から徒歩20分
【メニュー】ちゃんぽん 1,070円
【味】パンチの効いたちゃんぽん
【雰囲気】シックな雰囲気
【私のおすすめ度】B

★私のおすすめ度格付(僭越ながら)
AAA 大満足!絶対おすすめ
AA 満足!超おすすめ
A おすすめ
B 可もなく不可もなく
C 人によってはおすすめしない
D おすすめしない

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